「M&Aをやろう」と決めたのに、なぜ止まってしまうのか

「M&Aで会社を成長させたい」——そう決断したにもかかわらず、気づけば半年、1年と時間だけが過ぎている。そんな経営者の方は少なくありません。

多くの場合、原因は戦略の間違いでも、資金力の不足でもありません。「誰がやるか」を決めないまま走り出し、結局は経営企画部の担当者1人、あるいは経営者自身が本業の合間に対応する体制になってしまっていることが、最大のボトルネックになっています。

年商10億〜100億円規模の中堅・中小企業では、M&A専任チームを社内に抱えている会社はごく一部です。多くは「専任者ゼロ」か「兼任1人」でスタートし、そのまま止まってしまう。これは、あなたの会社だけが特別に準備不足なのではなく、この規模の企業がほぼ例外なく直面する構造的な問題です。

実際、「M&Aをやりたい」と経営会議で号令がかかっても、数ヶ月後には「担当は誰がやっているんだっけ」という状態になっている、という話は驚くほどよく耳にします。
誰も悪くない、けれど誰も進めていない——この「宙ぶらりん」の状態こそが、多くの会社がM&Aの入口でつまずく最大の原因なのです。

なぜ「担当者1人」ではM&Aが進まないのか

M&Aの実務は、想像以上に工程が多く、専門性も多岐にわたります。案件を探す「ソーシング」、相手先を絞り込む検討、条件交渉、資料作成、デューデリジェンス(DD)の手配、契約書の確認、そしてクロージング後のPMI(統合プロセス)まで——どの工程も片手間でこなせるものではありません。

しかも、M&Aの成約までには一般的に半年〜1年半程度かかると言われています。この間、担当者は本業を抱えながら、以下のような業務を並行してこなす必要があります。

  • 候補企業のリストアップと初期アプローチ
  •  ノンネーム情報の検討(実際には100件近くに目を通して、ようやく10件程度がIM(詳細検討)に進み、その中の1件が成約に至るというのが実感値です)
  • 仲介会社や金融機関、士業とのやり取り
  • 社内稟議・経営会議向けの資料作成
  • DDの論点整理と専門家への依頼

これだけの業務量を1人で抱えれば、優先順位は自然と「緊急度の高い本業」に流れていきます。M&A案件は後回しにされ、検討スピードが落ち、良い案件ほど他社に先を越されてしまう。実際、良質な売り案件は情報公開から24時間以内に数十件もの問い合わせが集まると言われており、「検討に時間がかかる会社」は入口の時点で不利になってしまうのです。

さらに見落とされがちなのが、コストの負担感です。仮に譲渡対価3億円の案件であれば、仲介手数料(対価の5%相当で1,500万円程度)に加え、DD費用200万円前後、そして社内人件費だけでも500万円以上がかかり、総コストは3億2,000万円規模になることも珍しくありません。この金額を「担当者1人の片手間」で判断しきるのは、荷が重すぎるというのが実情です。

「担当者不在・1人体制」が引き起こす失敗パターン

社内リソースが不足したまま見切り発車すると、次のような失敗につながりやすくなります。

待ちの姿勢になり、良い案件が来ない

自社から積極的に動く体力がないため、仲介会社から紹介される案件を待つだけになりがちです。結果として、条件のよい案件は情報が広まる前に他の買い手に押さえられてしまいます。

リスク判断を1人で抱え込み、決断できない

DDで見つかった懸念点や、簿外債務・キーマン離職・許認可の問題といったリスクを、担当者や経営者が1人で抱え込んでしまうと、判断に時間がかかり、決断そのものができなくなります。

仲介会社に主導権を渡してしまい、高値掴みをする

自社に検討する体制がないと、成約を急ぐ仲介会社のペースに乗せられ、十分な比較検討をしないまま条件を飲んでしまうケースがあります。

PMIを放置し、買収後に統合が進まない

クロージングをゴールだと捉えてしまい、統合後の体制づくり(PMI)に手が回らず、期待したシナジーが出ないまま形骸化してしまう。

「誰がやるか」を決めないまま動き出し、担当者が疲弊する

経営者の号令だけで走り出し、実務を担う人・権限・時間が明確に割り当てられないまま進めてしまうと、担当者は本業との板挟みで疲弊し、途中で検討自体がフェードアウトしてしまいます。

これらはいずれも、経営者や担当者の能力不足が原因ではありません。「担当できる人・時間が構造的に足りない」ことが引き金になっているという点を、まず理解しておく必要があります。

解決の方向性──「全部を内製化する」以外の選択肢

ここで重要なのは、「専任担当者を採用する」か「諦める」かの二択ではない、ということです。

M&Aの実務は、案件探索(ソーシング)から交渉、資料作成、進行管理、DD対応、クロージング後のPMIまで、外部の専門家に実務そのものを代行してもらうという選択肢があります。いわゆる「アドバイザリー」や「コンサルティング」が助言にとどまるのに対し、実務そのものを巻き取ってくれるパートナーであれば、社内の担当者は「意思決定」に集中できるようになります。

社内に専任者を新たに1人採用するとなれば、採用コストや教育期間を考えても相応の投資が必要です。一方で、実務を代行してもらう形であれば、必要なタイミングで必要な工程だけを任せることができ、意思決定の質を落とさずにスピードを確保できます。

特に、売り手側から手数料を受け取らず買い手側の利益だけを考えて動くパートナーであれば、「早く成約させたい」というインセンティブに引っ張られることなく、「本当に買うべきか」「この条件で進めていいか」を一緒に判断してもらえるという安心感があります。

また、案件探索の入口を仲介会社からの紹介だけに頼らず、プラットフォーム・仲介会社・士業ネットワーク・金融機関・直接アプローチという複数のルートを同時に使えるパートナーであれば、「待ちの姿勢」から抜け出し、自社から動いて良い案件に先んじてアプローチすることも可能になります。社内担当者が1人であっても、実務の大部分を外部に任せることで、意思決定のスピードと質の両方を確保できるのです。

まとめ

M&Aが進まない最大の理由は、戦略や資金ではなく「誰が実務を担うか」が決まっていないことにあります。担当者1人、あるいは経営者の兼任という体制のままでは、良い案件を逃し、リスク判断を誤り、買収後の統合にも手が回らなくなるリスクが高まります。

大切なのは、社内に無理に専任チームを作ろうと抱え込むことではなく、実務そのものを任せられる外部パートナーを見極め、社内は意思決定に専念できる体制を整えることです。


株式会社Aspire Partnersは、M&Aの案件探索(ソーシング)から交渉、資料作成、進行管理、クロージング、そしてPMIまでを一気通貫でサポートする「M&Aプロセスアウトソーシング(MPO)」を提供しています。プラットフォーム・仲介会社・士業ネットワーク・金融機関・直接アプローチという5つのルートを組み合わせた候補企業探索により、待ちの姿勢では出会えない案件にもアプローチが可能です。

売り手から手数料を受け取らない立場だからこそ、買い手企業の「社内M&Aチーム」として、買わないという判断も含めてフラットにサポートします。「M&Aを進めたいが、社内に担当できる人がいない」とお悩みの方は、ぜひ一度、株式会社Aspire Partnersにご相談ください。