M&Aによる買収を検討し始めると、必ずぶつかるのが「誰に頼むか」という問題です。
バイサイドFA(買い手側フィナンシャルアドバイザー)、仲介会社、M&A実務代行(プロセスアウトソーシング=MPO)——似たような言葉が並び、費用の仕組みも分かりにくいため、比較検討の段階で立ち止まってしまう経営者・経営企画担当の方は少なくありません。

「バイサイドFAに頼めば安心なのか」「実務代行とは何が違うのか」「結局いくらかかるのか」。
この記事では、買い手企業が知っておくべきバイサイドFAの費用相場と、M&A実務代行との違いを整理し、自社にどちらが向いているかを判断できるようにします。

「仲介会社・FA・実務代行の3択」は誤解

比較検討の際によくある誤解が、「仲介会社」「バイサイドFA」「M&A実務代行」を横並びの3つの選択肢として捉えてしまうことです。実際にはこの3つは対等な選択肢ではありません。

仲介会社は、売却を検討する企業(売り手)の案件を保有し、買い手候補とマッチングさせる立場です。優良な売却案件の多くは仲介会社経由で市場に出てくるため、買収を進める買い手企業は、進め方によらずどのみち複数の仲介会社が持つ案件と接点を持つことになります。つまり仲介会社は「使うか使わないか」を選ぶサービスではなく、買収を進める過程でほぼ必ず関わることになる取引相手です。

一方でバイサイドFAとM&A実務代行は、その仲介会社を含む案件探索・交渉のプロセスを、買い手側の立場で「誰がどこまで担うか」の違いです。本当に比較検討すべきなのは、仲介会社を使うかどうかではなく、この実務を自社で抱えるか、外部に助言を求めるか、実務ごと代行してもらうかという軸になります。

バイサイドFAの費用相場と仕組み

バイサイドFAの報酬体系は、多くの場合「レーマン方式」と呼ばれる成功報酬型です。譲渡対価の金額に応じて数%の手数料率を掛け合わせて算出され、金額が大きくなるほど料率は下がる仕組みが一般的です。

目安として、譲渡対価3億円規模の案件であれば、手数料は5%前後、金額にして1,500万円程度になることが多く、最低報酬額としてあらかじめ1,000万〜2,500万円程度が設定されているケースも珍しくありません。これに加えて、着手金や中間金が別途発生する契約形態もあります。

つまり、案件が小規模であっても最低報酬額を下回ることはなく、買収金額が小さい中小企業のM&Aほど、手数料の負担感は相対的に大きくなりやすいという特徴があります。

M&A実務代行(MPO)の費用相場と仕組み

M&A実務代行は、成功報酬に加えて、月額固定やプロジェクト単位の報酬を組み合わせる形態が一般的です。案件が成約に至らなかった場合でも、実務の進行そのものに対して費用が発生する一方、探索や交渉といった「手を動かす部分」を丸ごと引き受けてもらえるため、社内の人件費や機会損失を含めたトータルコストで見ると、必ずしも割高にならないケースが多くあります。

参考までに、3億円規模の買収案件でかかる総コストを試算すると、譲渡対価3億円に加え、仲介手数料1,500万円(5%想定)、デューデリジェンス(DD)費用200万円、社内人件費500万円以上を積み上げると、総額でおよそ3億2,200万円程度になります。DD費用はスコープを適切に調整すれば100万〜300万円程度に圧縮することも可能で、どこにどれだけコストをかけるかは、実務代行を活用することで柔軟にコントロールしやすくなります。

バイサイドFAと実務代行、何が違うのか

役割の違い

バイサイドFAは基本的に「助言」が中心です。企業価値評価や交渉方針のアドバイスは行いますが、候補企業への実際のアプローチや資料作成、日々の進行管理までを担うとは限りません。

一方、M&A実務代行は、案件探索(ソーシング)から交渉、資料作成、進行管理までを一気通貫でハンズオンで代行します。ここで重要なのは、M&A実務代行に依頼したからといって仲介会社を使わなくなるわけではないという点です。むしろプラットフォーム、仲介会社、士業ネットワーク、金融機関、直接アプローチという5つのルートを併用し、複数の仲介会社に日常的にコンタクトを取り続けて候補企業を探すこと自体が、実務代行の中心的な仕事になります。買い手企業の「社内の人間」として、仲介会社十数社との窓口対応を丸ごと引き受けるイメージです。

中立性の違い

仲介会社は売り手・買い手の両方から手数料を受け取る双方代理が基本です。これに対し、バイサイドFAとM&A実務代行はいずれも買い手側からのみ報酬を受け取り、買い手の利益だけを考えて動く立場です。この点は共通していますが、実務代行はさらに「無理に成約させる」インセンティブが働きにくい設計にできる点が特徴です。仲介会社経由で紹介された案件であっても、成約ありきで話を進められて気づけば高値掴みをしていた、という失敗パターンを防ぐには、この立場の違いが重要になります。

スピード感の違い

優良な売却案件は、公開から24時間以内に数十件の問い合わせが殺到すると言われるほど競争が激しく、「待ちの姿勢」では良い案件を他社に先を越されてしまいます。助言中心のバイサイドFAでは、仲介会社への日常的な問い合わせや候補の絞り込みそのものが契約範囲外になっていることもありますが、実務代行であれば仲介会社を含む複数チャネルへの接触を主体的かつ継続的に担うため、スピード面でも動きやすくなります。

メリット・デメリット比較

バイサイドFAは、専門的な助言を受けながら、仲介会社とのやり取りや交渉は自社主体で進めたい企業に向いています。一方で、実務を動かす人手や時間は自社で確保する必要があり、担当者が一人で抱え込んで疲弊してしまうリスクは残ります。

M&A実務代行は、仲介会社を含む複数ルートとの折衝から交渉、進行管理までを任せられるため、社内に専任のM&A担当者がいない企業でも動き出しやすいのがメリットです。デメリットとしては、月額やプロジェクト費用が発生する分、成約に至らなかった場合のコスト感を事前にすり合わせておく必要がある点が挙げられます。

どんな企業にどちらが向いているか

すでに社内にM&A経験者がおり、仲介会社とのやり取りや交渉のハンドリングは自社で行いたいが、専門的な助言だけ受けたいという企業には、バイサイドFAが向いています。

一方で、「M&Aを進めたいが社内に専任担当者がいない」「過去に仲介任せで高値掴みをした経験がある」「良い案件が来ない、あるいは来ても検討が追いつかない」といった悩みを抱える中堅・中小企業には、仲介会社との窓口対応まで含めて実務そのものを代行してくれるM&A実務代行(MPO)が適しています。1件の成約に至るまでには、100件のノンネーム接触から10件のIM検討を経るのが一般的な目安であり、この母数を維持し続けるために複数の仲介会社と並行してやり取りし続ける実務負荷は、片手間でこなせるものではありません。

まとめ

バイサイドFAとM&A実務代行は、いずれも買い手の利益を優先する立場である点は共通していますが、「助言」にとどまるか「仲介会社との折衝を含む実務そのもの」を担うかという点で大きく異なります。費用の仕組みも、成功報酬中心か、月額・プロジェクト費用を組み合わせるかで違いがあり、自社の体制や進めたいスピード感に合わせて選ぶことが重要です。

株式会社Aspire Partnersは、コンサルでも仲介でもない「実行する人」として、買い手企業の社内M&Aチームのような立場で、仲介会社を含む複数ルートへの案件探索から交渉、資料作成、進行管理、クロージング後のPMIまでを一気通貫でサポートしています。売り手から手数料を受け取らない立場だからこそ、買わないという判断も含めて、買い手の利益だけを考えた提案が可能です。M&Aを進めたいが一歩を踏み出せない、担当者が足りない、という方は、まずはお気軽にご相談ください。

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